フランス映画の巨匠といえば、まず思い浮かぶのがジャン=リュック・ゴダール。
‘勝手にしやがれ’‘気狂いピエロ’など、映画ファンでなくともヌーヴェルヴァーグの名作たちは、耳にしたことがあるだろう。しかし、ゴダール映画を素直に好き!と言えるかどうか?屁理屈と哲学と、小難しい言葉遊びetc…。スタイリッシュでおしゃれな画面構成に心惹かれて見始めるも、最後は「ちょっと頭が痛くなっちゃう」もしくは「理解できていない自分は、まだヒヨッ子なの?」なんて、どんどん深みにはまってしまうか。
どちらにせよ、‘ただ映画を見せて終わらせる’だけの監督ではないことは確か。そして、ごねごねと全編を埋め尽くす言葉によるコラージュと屁理屈の嵐は、非常にヒジョーーにフランス的だなあと思う。

そのゴダールの幻の名作と言われた1967年作の‘Week-end’を私はこれまで3回見た。1、2回目は、旧シネマテーク・フランセーズ、シャイヨー宮館で開かれた、こちらもヌーヴェルヴァーグの寵児と謳われた名優、ジャン=ピエール・レオのレトロスペクティヴ(回顧展)にて。
60年代のカラフルでポップな車、ファッション、表面的なおしゃれ感にときめいている暇もなく、映画は無秩序で不条理極まりない悪夢のWeek-endへと暴走し始める。
16区に住む、あるブルジョワ夫婦が親の遺産目当てに週末ごとの‘親孝行’へ実家のあるワンヴィルへ向かう。その間に繰り広げられる人間の欲望だらけの、子供じみた狂気とエピソードの数々は、フランス社会への、もっと大きなくくりで言えば、世界にはびこる強欲な人間社会そのものへの強力なアンチデーゼの塊だ。と、話はゴダールにつられて小難しくなっちゃったが、最初にこの映画を見たときに「似ている…この不条理感。パリで暮らす日々の気持ちに似ている!」と思ったのだった。まさか、この映画ほどはさすがのパリも無秩序ではないけれど、人間の欲望が日本に比べると格段にそのまま回転している街、パリ。
そのすっちゃかめっちゃか感が、ある意味生きる原動力にもなっていて、おかしな爽快感をうむ。そんなわけで、私のパリでの日記を綴った本のタイトルは、実はこの映画から発想を得たものなのだっていうことを言いたくて、ごねごねとゴダールばりに文章を書き連ねてみているあたり、私も相当屁理屈こきになっているなあと自覚したりして。
ところで、パリのWeek-endはお店がほとんど閉まるので(マレ地区は開いてます)、旅行でやってきた日本人には‘使えない週末’となりがちなのだけど、マルシェで買い物したりなんにもしないでのんびりしたり…本来の意味でのWeek-endの楽しみがいっぱい詰まっていると私は思う。
お菓子の名店ダロワイヨで‘ガトー・ウィークエンド’を買って公園に持ち込み、パリのWeek-endを想いながら食べる、なんていうのも粋な週末の過ごし方。
'
WEEK-END'
1967年フランス/イタリア作品
監督・脚本:Jean-Luc Godard
出演:Mireille Darc Jean Yanne Jean-Pierre Leaud
※各レンタルビデオ店で、この作品を借りることは
現在では難しくなっています。あらかじめご了承ください。
アマゾンなどのネット販売で、DVDを購入することは可能です。