映画のスペシャリスト猫沢エミと、ただの映画大好き長谷川たかこがお届けするシネマ往復書簡。
ふたりの間で映画をテーマにどんな会話が交わされるのか?
2007/07/09
エミさん、寒くて雨ばっかり、ひどい天気ですね!夏のソルドだって「夏服買ってもいつ着るの?」と盛り上がりません。だから映画。エミさんが書いた『明るい瞳』、ビデオ屋でみつからないんでフラストレーションです。
『パイレーツ・オブ・カリビアン 3』を観にいこうと誘われた晩、ジョニー・デップはいいけど、あのシリーズあんまり好みじゃないと断わり、でも何か観たくてDVDを探しました。目に留まったのは『ロシュフォールの恋人たち』。6月26日、この映画を撮った翌年に交通事故で亡くなった(25歳!)フランソワーズ・ドルレアックのお命日とラジオで知りました。さらに今年は、この映画が撮られてから40周年で、舞台となったロシュフォールの広場で、記念フェスティバルがある、と聞いて気になっていました。はるか昔に感激してから一度も観ていない。今観たらどう感じるかしら?
ノルマンディの小さな港町、ソランジュとデルフィーヌという双子の姉妹とカフェを営む母親。彼女たちを中心に、町に立ち寄る人、戻ってきた人、いつもいる人たちが出会い、すれ違います。そういえば、以前書いた『誰かを待っている』も田舎町のカフェの親父を中心に、人々が交差する話、セシル・ド・フランスが良かった『Fauteuilles d’orchestre(オーケストラの座席)』も、同じ構図でした。フランス映画の得意ジャンルなのかも。
ロシュフォールに話を戻して、作曲家を目指すソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)と、子供にバレエを教えるデルフィーヌ(デルフィーヌ)は、2人とも美しく、恋に恋するお年頃。自分たちを待つ王子様はどこにいるのか、パリに行けばもっとチャンスがあるのでは?・・・口を開けばそのことばかり。今は一人者の母親は、てきぱきカフェを切り盛りしつつ、心では別れた恋人のことを想っている。カフェに立ち寄る水平のマクサンス(ジャック・ペラン)は憧れの女性をキャンバスに描き、出会える日を待っている。何年かぶりに町にもどってきて楽器屋を開いたシモン(すでに前頭部が後退しているミッシェル・ピコリ)も、居所のわからない昔の恋人のことが忘れられず、時々ぼーっとしている。ああ、いつの時代も恋多きフランス人!
よくあるパターンのシナリオではあるけれど、ジャック・ドゥミのこの作品がカルト的になっているのは、俳優の顔ぶれとミュージカルとしての完成度の高さ。カトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアックの姉妹が、もううっとりするくらい綺麗で、踊りも上手い(歌はさすがに吹き替えです)。町の広場のお祭りを企画する若者(『ウエスト・サイド・ストーリー』のジョージ・チャキリス)、ミシェル・ピコリを訪ねてくる音楽家(『雨に謳えば』のジーン・ケリー)が披露するダンスは、目が釘付けになります。さらに、ファッションが今すぐ着たくなるほど新鮮で素敵!双子の姉妹はいつも色違いのお揃いのワンピースに色を合わせたローヒールのパンプス。お母さんも綺麗な色のAラインのワンピース、大きな娘がいるのに自分も恋愛現役っていうのがいいですね。
ミュージカルって、ピッタリくるときと、全然入れないときとありませんか?大して歌が上手くないのに、歌われちゃうと、見てるほうが恥ずかしくなったりして。これはお薦め、そして今年が見頃です。
12時ごろ「いやー特殊効果がすごかった!」とカリブ海から戻った夫、私が入り込んでいた世界とかなり隔たりを感じました。
ロシュフォールの恋人たち(Les Demoiselles de Rochefort)
1967年フランス作品
監督・脚本/ジャック・ドゥミ
出演/カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワーズ・ドルレアック