映画のスペシャリスト猫沢エミと、ただの映画大好き長谷川たかこがお届けするシネマ往復書簡。
ふたりの間で映画をテーマにどんな会話が交わされるのか?
2008/04/16
この映画(原題:『Ne touchez pas a la hache 斧に触るな』)は、フランスでは1年前、2007年3月末に封切りになりました。『美しき諍い女』と並んでリヴェットの最高作品といわれ、気になっていたのに見逃してしまったので、いい機会でした。 原作『ランジェ公爵夫人』は、読書家の友人に言わせると、バルザックの作品の中で最高、だそうです。
バルザックはお金持ちになりたい、有名になりたいと、権力願望が強かった人で、女好きでも有名でした。でも現実は、借金取りに追われ、デブで醜男で思うように女にモテなかったとか。
『ランジェ公爵夫人』は、すごく惚れたのにモノに出来なかった実在の女性、キャストリー公爵夫人がモデルで、小説で彼女に復讐したかった、そうです。不器用で、重苦しく、平民のコンプレックスを持ったモンリヴォーは、もちろんバルザック自身。ギヨーム・ドパルデューが演じていることを知ったら喜ぶでしょう!
ジャンヌ・バリバールとドパルデュー、主役の2人ははまり役。アントワネットの伯母を演じるビュル・オジエもキラリと光ります。老いてもコケット。豊富な恋の経験から可愛い姪に忠告を与えますが「公爵夫人という立場を棒に振ってはダメよ。扶養手当をもらって愛人の世話になるなんて!」とか「男に(公爵に)別れる理由を与えてはダメ」というようなアドバイスは、実にフランス貴族社会ですね。
エミさんは『O嬢の物語』を引き合いに出しましたが、私は同じくヌーヴェル・ヴァーグのトリュフォーの『突然炎のごとく』に思い出しました。愛し合っているのにすれ違ってしまう2人。シンクロしなかった恋は、何年か後に修復しようとしても決して当時の炎は戻りません。そして消えない刻印を残す。モンリヴォーの友人のいうように「・・・忘れてしまえ。子供の頃に読んだ本のように・・・」なんて可能でしょうか?
ランジェ公爵夫人 (Ne touchez pas la hache)
2006年 フランス・イタリア作品
監督・脚本/ジャック・リヴェット
原作/オノレ・ド・バルザック
出演/ジャンヌ・バリバール、ギヨーム・ドパルデュー、ミッシェル・ピコリ
※日本での公開は、2008年4月5日(土)岩波ホール他、順次全国ロードショー。
http://www.cetera.co.jp/Langeais/