たかこさん、こんにちは。先日のタイ料理お昼会で、またまた久しぶりにお会いできましたね。パリに来ると、いつも最初の1ヶ月が一番忙しくて、たかこさんにすぐさま会えないのがもどかしいですね。同じパリに居るのに。ところで、前回の‘ランジェ公爵夫人’のたかこさん評、とても面白かった!私はバルザックを丁寧に読んだことがないので、見えてなかった部分があったなと思いました。‘絶対に体を許さない’官能的な関係。この一行に「なるほどなあ~…」と感じ入りました。
さて、先日たかこさんから「エミさん、次回はフランス映画の“低俗化”が話題になっているけど、それについて書くのはどうでしょう?」とお電話頂き、コメディアン・映画監督のダニー・ブーン最新作‘Bienvenue chez les Ch'tis’を早速、観てきました。誉れ高いフランスの名作たちを押しのけて、歴代興行収入新記録を作ってしまった話題作。くだらないのか?それとも新記録を作るだけの何か理由のある映画なのか?ひたすらハテナマークのまま、映画館へ。
プロヴァンスの郵便局で局長をしているフィリップは、妻のジュリーと息子の3人暮らし。鬱の傾向がある妻のために、コート・ダジュールへの転勤を希望します。しかし、そのための画策が郵便局にバレて、フランスの最北地、ブルグにとばされることになってしまいます。
フランス人は皆、お国自慢なところがあるけれど、太陽の降り注ぐ南仏は多くの人が住みたい場所。逆に一年中灰色の空の北フランスには魅力を感じない人が多いです。北は恐ろしいところ…がさつな人たちの住む凍てついた大地…理解不能な北なまりetc。いや、そのステレオタイプな先入観と、真剣におののくふたりが笑える。そんな場所に妻が住んだら、ますます鬱になる、とフィリップは単身赴任を決意。ダウンを着込み、憂鬱な気持ちでブルグへ向かうのです。しかし、ブルグでいざ生活を始めてみると、粗野だけれども心温かい郵便局の職員たちに囲まれて、フィリップは新しい価値観を見出して行く。その、職員のひとり、アントワーヌ役でブーンが出演しています。…と、あらすじはこういった内容。
で、面白かったかというと、いや、思ったよりもいろんなことを考えさせられる映画でした。日本人の私にとっては。たとえば、フィリップのような社会の負け組が、左遷先でもう一度、新しい価値観と人生を見出してゆくだとか、アントワーヌの過保護すぎるお母さんが、息子の恋路を邪魔するだとか、このわかりやすいテーマ、まるで日本のドラマみたいじゃないですか?
フランス人がここまでわかりやすいウェットなドラマをわざわざ劇場まで観に行っちゃうのかーという驚きと、行っちゃうどころか、興行収入新記録を作ってしまうほど、こうした‘人情モノ’に惹かれる現状にちょっとびっくりしました。いいドラマだとは思うけれど、劇場まで足を運ぶのはどうかな…、というのが正直な感想。それでも興行収入新記録だものなあ…。たかこさんは、この現象、どう分析されますか?
Bienvenue chez les Ch'tis
2007年 フランス作品
監督/ダニー・ブーン
出演/ダニー・ブーン、フィリップ・デュケンヌ、カッド・メラド
※現在、パリのMK2-Bibliothéque/Gambetta/Nation/Quai de Loireなどで上映中。
長谷川たかこ プロフィール
パリ在住20年の文筆家。版権エージェント・翻訳家を経て出版プロダクションを立ち上げ、フランスのバンド・デシネ(漫画)を日本に紹介。漫画家の長谷川町子は伯母にあたる。 |
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猫沢エミ プロフィール
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