猫沢シネマ

映画のスペシャリスト猫沢エミと、ただの映画大好き長谷川たかこがお届けするシネマ往復書簡。
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たかこ&猫沢のシネマ往復書簡

エミさん、カンヌ映画祭で『クリスマス物語』が公開された直後のラジオFrance Interのコメントは「素晴らしいの一言に尽きる傑作。見終わったあとすぐもう一度見たくなるこの感覚は、宮崎の『千と千尋の物語』に似ている・・・」おお、宮崎駿が引き合いに出されるとは!
サガン
サガン
サガン
この前評判に加えて、もともとアルノー・デプレッシャンが好きで、マチュー・アマルリックが大好きなので、封切りと同時に駆けつけるつもりが、延び延びになってやっと実現。ところが、期待が大きすぎたせいか実はちょっとがっかりでした。
親、子供、その配偶者、孫と3世代が集まるフランス恒例のクリスマス。プレゼントやシャンパンやご馳走を囲む楽しい集い、のはずなのに、家族間の人間関係の縺れが表面化する機会でもあります。ストーリーはエミさんが書いてくれたので繰り返しませんが、母(カトリーヌ・ドヌーヴ)と息子(マチュー・アマルリック)が、夜のブランコで煙突のようにタバコを吸いながら交わす会話がなんともスゴイ!:
「相変わらずボクを愛していないんだね」と息子。
「あなたを愛したことなんてないわ」と母。
「ボクだって」「ずっと戦争状態だったわね」「でもボクが勝った」「まだよ」「いや悪いけど、君は脊髄炎で、ボクは元気でピンピンしている。その上、君はボクの骨髄が必要だ」「なんてうぬぼれ屋なの」・・・・
この母・息子に加えて、すべてを見ていながら何も言わない父親(ジャン=ポール・ルシヨン)の親子関係だけで十分すぎるテーマ。なのに、家族内の他の問題も浮上してきて、詰め込みすぎの感がありました。

逆に、批評がイマイチだったのに、とてもよかったのが『サガン』。『愛の賛歌 エディット・ピアフ』でのマリオン・コティヤールに比較されるシルヴィー・テステューのサガンになりきり方。でもサガンの仕草や雰囲気、小気味のいいユーモアを再現しているだけでなく、彼女が若いときから抱えていた底なしの孤独がシンシンと伝わってきます。『悲しみよこんいちは』の大ヒットで禿たかのようにサガン(のお金に)に群がる人たち、莫大な財産が底を尽いたときも支える数少ない友人、それを一時忘れさせてくれるアルコールとドラッグ・・・あれほどの才能と名声を持ちながら、まるで処女作のタイトルのように、何と悲しい人生。
サガンと強い愛情関係を生きるデザイナー、ペギーを演じるジャンヌ・バリバールもはまり役です。ぜひ、日本に帰る前に観てほしい作品です。
SAGAN
2008年 フランス作品
監督/ダイアン・キュリー
出演/シルヴィー・テステュー、ピエール・パルマード、
    ジャンヌ・バリバール、アリエル・ドンバル
長谷川たかこ プロフィール
パリ在住20年の文筆家。版権エージェント・翻訳家を経て出版プロダクションを立ち上げ、フランスのバンド・デシネ(漫画)を日本に紹介。漫画家の長谷川町子は伯母にあたる。
長谷川たかこ プロフィール
猫沢エミ プロフィール
ミュージシャン、エッセイスト、映画解説者、グラフィティーライター。2002年よりパリ在住。 著書に "パリ季記~フランスでひとり+1匹暮らし~" (地球丸)がある。
オフィシャルHP: Ou est mon chat?(www.necozawa.com)
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