たかこさん、そして、このコーナーをご愛読のみなさんこんにちは。子宮筋腫の手術でお休みして、すっかりご無沙汰してしまいました。お陰様で、だいぶ元通りになりました。
さて、私が休んでいる間に、いくつも素敵な映画をたかこさんにご紹介していただきましたが、とくに「
サガン」!見たかった。DVDになったら、絶対に見よう…。
そして前回の「
モナコの娘」のところを読んでいて、あれっ?と思ったのです。
たかこさんが書かれていた‘Demon de midi’(50の悪魔/フランスで下り坂年齢の男女が若者にふらりとくることを言う言葉)に陥った、主人公の弁護士を演じるファブリス・ルキーニ。
セドリック・クラピッシュの新作「PARIS」でもやはり、ソルボンヌ大学の若くて美しい女生徒にのめりこむ、歴史学者ロランの役どころだったなあと。ルキーニって、50の悪魔向きのキャラクターなのかしら?しかし、50歳あたりを越えてくると、誰しも己の細胞の衰えを実感するのでしょうね。私はまだ若輩者の30歳後半ですが、すでに若い人を見ると「ああ、細胞が輝いているな。」とまぶしいです。そうゆう、自分の中から消えてゆく若さを体が感じ取って惹かれるのは、ごく自然なことなのかもしれません。恋愛に対して、勝手なリミットを設けがちな日本では「いい歳こいて!」と言われるのでしょうかね?どの年齢も‘良い歳’で、それをこいて何が悪い?!と、死ぬまで恋愛したい私です。
ちなみに、たかこさんはもうご覧になりましたか?フランスでは、170万人動員の大ヒットだったという、パリに生きる様々な人間模様を描いたこの作品。日本では2009年のお正月映画第一弾として公開予定です。
ところで、パリをリアルに描いた作品を見ると、どうも私は変に動揺して泣けてしまいます。(笑)実際にパリに居て、すったもんだ日々を過しているときは、同棲している恋人の文句ばかりをぶうぶう言っている女の子みたいになるのですが、いざ、こうして客観的にパリを眺めてしまうと、やっぱりこの街と、そこに住む人々が、嫌な面も丸ごとひっくるめて愛しいと思ってしまう。そんな自分に照れつつも、東京の試写会場で前のめりになって観ました。
物語のあらすじは、心臓の病に冒されたムーラン・ルージュの元ダンサー、ピエールの視線を中心に、パリで生きる人々が微妙にからみあいつつ、人生の悲喜こもごもが綴られてゆくというもの。
2006年にフランスで観た「
パリ・ジュテーム」や、ジュリー・デルピーの「パリ、恋人たちの2日間」(日本では今年5月に公開)など、近頃、‘幻想ではないリアルなパリ’を描こうとする傾向が強いように思います。しかし、これだけ多種多様な含みのある街を2時間という映画の枠に押し込めようとすると、どうしても誇張があったりするのはやむを得ないところですが、それでも、このクラピッシュの「PARIS」も同じく、よく描かれているなというのが私の感想です。
私がこの映画の中に登場する、典型的な‘パリ人キャラ’の中で特に注目したのが、パン屋の女主人。常日頃思っていたことですが、どうしてパリのパン屋のマダムは、偉そうで高飛車で、ややもするとレイシストが多いのか?フランスにおけるパン屋というのは、他の○○屋さんとは一線を画する存在なのではないか?となんとなく感じています。その理由は、主食を作らなくてはならない店で、食いっぱぐれの少ない業種という事からきているような気もするし、
職業の地位的にはさほど高くないけれど、パン屋成金的な状況と、ブルジョワへのゆがんだ憧れがないまぜになって、こうゆうマダムが生まれるのかも?など、研究材料としては面白い人種だなと、つい観察してしまいます。
「PARIS」に出てくる各登場人物が、実際にパリに住む、典型的なキャラクターの象徴として描かれているのが興味深い。ただ、この面白さは、この街に住んだ人でないとわかりづらい部分かもしれない。それでも、それぞれのクラスや立場や職業の人々が、凛々と命を燃やして生きる様に、またそうゆう生き方をさせてくれるパリの街そのものに、最後はやっぱり涙…でした。
今回、「PARIS」に呼応して、話題のオムニバス映画「TOKYO」についても触れたかったのですが、長くなってしまったので次回にします。では、たかこさん、またパリで!
PARIS
2008年 フランス作品
監督/セドリック・クラピッシュ
出演/ロマン・デュリス、ジュリエット・ビノシュ、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル 他
* 日本では2009年お正月映画第一弾として、またBunkamuraル・シネマ20周年記念上映作品第一弾として公開予定。
パリ・ジュテーム
2006年 フランス・ドイツ・リヒテンシュタイン・スイス作品
監督/ガス・ヴァン・サント、ジョエル・コーエン、ブリュノ・ポダリデス 他
出演/ジーナ・ローランズ、マリアンヌ・フェイスフル、リュディヴィーヌ・サニエ 他
パリ、恋人たちの2日間
2007年 フランス・ドイツ作品
監督/ジュリー・デルピー
出演/ジュリー・デルピー、アダム・ゴールドバーグ、アルベール・デルピー 他
長谷川たかこ プロフィール
パリ在住20年の文筆家。版権エージェント・翻訳家を経て出版プロダクションを立ち上げ、フランスのバンド・デシネ(漫画)を日本に紹介。漫画家の長谷川町子は伯母にあたる。 |
 |
猫沢エミ プロフィール
|
 |