たかこさん、フレンチ・コードをご覧のみなさん、明けましておめでとうございます!
年末、寒いパリから日本へ戻りましたが、今回のパリ滞在では、特にたかこさんとお会いする時間が短くてちょっと残念でした。1ヶ月3週間の滞在で9回の引越しと仕事。映画すらなかなか観る時間がなかったのですが、帰る前にやっと1本観れました。ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の新作‘Burn After Reading’、読んだら燃やせ!
あらすじを読んだときに、出てきた単語が‘CIA’や‘アナリスト’だったので、深刻なテーマをコーエン兄弟がどう扱うのか?と、少しかまえてしまいましたが、一見すればこのとおり。あいかわらず切れた社会風刺、するどいバカポイントなど、コーエン節がびしびしと効いた快作でした。
舞台はワシントンにほど近い、国家機密が結集するアーリントン。アナリストであるオズボーンは、アルコール中毒を理由に、CIAを解雇されてしまいます。その妻で女医のケイティは、財務省連邦保安官のハリーと不倫関係の上、離婚訴訟の準備のため、オズボーンのPCから彼のデータをコピー。ところがオズボーンは、長年勤めたCIAの自伝を書くために、トップシークレット情報をこのPCに保管していたのでした。ひょんなことから、この街のスポーツジムで働くリンダとトレーナーのチャットにこのCDが渡り、ふたりが思いついた、呆れるほどおバカな計画から、事態は笑っていられない状況へ転げ落ちてゆきます。
この、チャット役のブラピがいいんですよ。私、今までブラピのことを侮っていました。ごめんなさい!彼の演じるチャットのばかさ加減が絶妙。運動大好き頭はからっぽ♪の、能天気なチャット役をブラピにやらせるところもいいし、あっさりとあんな結末に落とし込むとは!
マクドーマンド演じるリンダも愛らしく、いいキャラクター。出会い系サイトでデートを重ねるもうまくいかない日々。整形手術を夢みてばかりで、ジムの上司、テッドの愛には気がつかない。そんなリンダが、女たらしのハリーと偶然にも関係を持ち出してから、事態はより複雑怪奇になってゆきます。
国家組織の過剰な機密主義を鼻で笑うかのような、CIAでの幹部のアホなやりとり、それにかかわる人たちが常に感じている、異常なまでの監視の目。その病的な日常に、能天気な一般人が関わると、一体どうゆう悲劇がまきおこるのか?そもそも一体どちらがバカなのか?を、ここまで簡潔に潔く描く力量はあっぱれです。
ところで前回、たかこさんが書いてらした‘
Tokyo !’。私はパリの試写会で見ましたが、現代の日本社会が抱えている病的な匂いが目に付いて、とても不安な気持ちにさせられたのを覚えています。特に第一話目のミシェル・ゴンドリーの『インテリアデザイン』。
江戸川乱歩の短編小説‘人間椅子’から視覚的なインスパイアを受けたのでは?と思わせる作品でしたが、たかこさんがおっしゃるとおり、日本では‘目に見えて誰かの役に立っていないと不安になる’社会だなあと私も感じました。実際、私自身にもそんな側面があって、パリでフランス人を相手にしていても「あなたの役に立ちたいの。」などと、口走ってしまったり。不安になると、価値基準が自分から得体の知れない他人へと移ってしまいがちになる。これは、日本人の他人を思いやる優しい部分でもあり、個人主義のフランス人からしてみれば、意味不明な‘余計なお世話’となるのかも。どちらにせよ、日本人の特質をするどく突いた外国人3監督の視点に、自分の中の日本人度を再確認させられた快作でした。
Burn After Reading
2008年 アメリカ作品
監督/ジョエル&イーサン・コーエン
出演/ジョン・マルコビッチ、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、
フランシス・マクドーマンド 他
* 日本では2009年4月公開予定。
パリでは、現在MK2など大型映画館を中心に上映中。
長谷川たかこ プロフィール
パリ在住20年の文筆家。版権エージェント・翻訳家を経て出版プロダクションを立ち上げ、フランスのバンド・デシネ(漫画)を日本に紹介。漫画家の長谷川町子は伯母にあたる。 |
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猫沢エミ プロフィール
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