クリスチャン・ラクロワがデザインを手がけたインテリアはフォルムを始めとってもフランス的。ファーストクラスはグレーとグリーン、セカンドクラスはラクロワらしい紫と赤のシート。好き嫌いは分かれそうだ。デザインだけでなく、モバイル機器のための電源を完備するなど機能性にも優れている。
そして何がすごいって、やっぱり速度。世界随一を誇るフランスの高速列車技術を駆使して実現した、時速320kmは世界最速。これで今まで運行が遅れていたパリからフランス東部への列車の旅がより快適になる。例えば、今まで4時間かかっていたストラスブールへは2時間20分、シャンパーニュで有名なランスへは1 時間半が45分と大幅に短縮。このTGVはEST EUROPÉEN(東ヨーロッパ線)というだけあって、その先のドイツ、スイス、ルクセンブルグへも延びていて、フランクフルトやシュツットガルトには4時間弱で着く。更に今回のTGV開通と共に地方線路への連結もよくなるというから、フランス国内だけでなくヨーロッパ近隣諸国も含め、列車での旅行の幅が大いに広がった。
また、ファーストクラスのみだが、このTGVが初という座席での食事サービス(朝食)も受ける。飛行機の機内食のような形態。さすがに日本の駅弁とは違う。クロワッサンやヨーグルトに加え、アルザス地方のお菓子クグロフのミニ版がご愛嬌。シャンパーニュ地方を通過することもあってシャンパンのサービスもあり。日本の新幹線ではおなじみだが、フランスでは食堂車があるのみで、座席まで飲食物を運んでくれるサービスはなかった。ちゃんと食事を取りたい人は食堂に行って食べ、飲みたい人はバーへ行く。現在の日本の新幹線は逆に食堂車はなく車内販売のみだそう。一度座席に着いたら動く必要はないということ。この日、ご一緒した鉄道記者の“筋鉄(スジテツ)”こと櫻井寛さんは、日本のこのシステムを嘆く。新幹線は「移動」手段でしかなくなっている。車内で出会った人と言葉を交わす空間もない。鉄道好きの彼は、仕事といえども列車に乗るときは常に「旅」でありたいと言う。なるほど。
この日は朝からあいにくの天気で、会場に着いた頃にはどしゃぶり・・。会場はフランスとドイツの国境を流れるライン川にまたがったジャルダン・デ・ドゥ・リーヴ(2つの河岸の公園)。もちろん屋外。このパーティーに招かれたことを恨みつつ、冷たい雨のなか屋根付きの屋外ステージへ。しばらく待っていると、コンフェランスが始まった。TGVに関するムービーやお偉方の挨拶が続いた後、SNCF総裁(なんと女性!)、首相フランソワ・フィヨン、同内閣のアラン・ジュペによるテープ・カット。そして、紙ふぶきとともにTGVの先頭になる車体が現れコンテンポラリーダンス(?)のような公演が始まった。そうこうしているうちに雨もやみ、晴れ間が見えてきたので、公園内に準備してあったアルザスやシャンパーニュの地方料理や飲み物でお腹を満たすことに。地元の人たちもお祭り気分で大いに盛り上がっている。朝の大雨なんてどこへやら、強烈な日差しのもと、シャンパンでクラクラしながら公園散歩を楽しんだあと、再びTGVでパリへ。会場を出るときに渡されたお土産を見ると、TGV東線用DVD付きガイド本(routard)が。気が利いている。
窓を流れる景色を眺めながら、心はもう目的地へ・・・列車の旅には飛行機や車にはない「旅への誘い」が感じられる。悪天候を恨んだことなどもう忘れて、またこのTGVを使って旅行したくなった。
※ TGVを始めヨーロッパの鉄道チケットは、
RAIL EUROPEのウェブサイト(日本語)に詳しい。サイト上でチケットの購入も可能。