フレンチ・野菜物語

ハーブ herbe

長い冬に終わりを告げて、春の訪れを感じるこの頃、待ってましたとばかりに、戸外へくりだすパリジャンやパリジェンヌたち。気の早い人は、すでにサマードレスやノースリーブに身を包み、マロニエの木の下で、運河のほとりで、公園の芝生で、春の空気を満喫している。緑がツヤツヤに輝き、日暮れが長くなったら、やっぱり戸外の食事が楽しくなる。ハーブが美味しくなるのもこの季節。セルフォイユ、パセリ、バジル、エストラゴンなど、香り高いハーブをどんどん料理に取り入れたい。オムレツ、サラダ、肉や魚のグリルや煮込み、パスタのソースに刻んで入れてもいいし、塩味のケーキやマフィン、クッキーに混ぜ込んでも、その風味をしっかり封じ込められる。ジャン・ルノワール監督の傑作『草の上の昼食』のように、大きなテーブルクロスを広げて、思い思いに食事の風景を楽しもう。春爛漫、眩しい陽気を背景に、戸外のシーズンは始まったばかり。
ハーブいろいろ
イタリアンパセリ persil plat
イタリアンパセリ persil plat肉、魚、キノコ、パスタ、スープ、野菜料理に欠かせない基本的なハーブ。フランスでは、パセリをみじん切りするとき、コップとはさみを使う。葉の部分を逆さにコップに入れ、はさみでちょきちょきと切っていく。刻んだパセリとにんにくを合わせた《ペルシヤードpersillade》にオリーブオイルをたらしてピザにのせたり、ムール貝、エスカルゴのソースに加えたり、とびきりの脇役となってくれる。熱を加えると風味がなくなるのでご用心。
エストラゴン estragon(タラゴン)エストラゴン estragon(タラゴン)
肉、魚、卵料理に使われ、ピクルスやマリネにも欠かせない。バターやクリームソースなど濃厚な料理とも好相性。白ワインビネガーにエストラゴンを漬け込んだ、エストラゴン・ビネガーも人気。家庭でも簡単に作ることができ、ドレッシングやマヨネーズを作る際に使えば、素敵なアクセントになる。
アネット aneth(ディル)アネット aneth(ディル)
フヌイユやアニスの仲間で、何ともいえない独特の香りが後をひく。サケやマスなど、川魚料理を抜群に引き立ててくれるハーブ。ヨーグルトやサワークリームに加えてジャガイモに添えたり、スモークサーモンに散らしたり、北欧の香りを堪能できる。
シブレット cibouletteシブレット ciboulette
ニンニクやニラ、エシャロットと同じ仲間で、かすかなオニオンの香りがする。オムレツ、サラダ、サーモンのリエット、チーズやバターに混ぜ込んだり、ゆで卵を刻んだサラダ・ミモザに飾ったり、幅広く活用できる万能ハーブ。ベランダで簡単に栽培できるので、常備しておきたい。
ミント menthe
ミント mentheロマンティックなギリシャ神話がもとになるミントはハーブの人気者で、すっきりと爽快な香りが特徴。細かく刻んで、小さくくり抜いたメロン、クスクス(スムール)、干しぶどうと混ぜ込めば、定番のお惣菜タブレの豪華版に。ベトナム名物のフォーやネム(小さな揚げ春巻き)を食べる時にも欠かせない。オレンジやいちごのフルーツ・サラダに少量加えるのもおすすめ。マグレブのとろけるように甘~いミントティーにも多用される。
コリアンダー coriandreコリアンダー coriandre
タイやベトナムなどのエスニック料理にかかせないハーブ。癖のある香りで好き嫌いが真っ二つに分かれる。刻んでサラダのドレッシングに加えたり、カレーの香り付けにも効果的。ライスペーパーにゆでた春雨、きゅうり、もやし、ニラ、海老、豚肉を一緒に巻いて、甘辛いタレをつけていただく生春巻きに入れても美味しい。
セルフォイユ cerfeuil(チャービル)
ユリ科で、ネギの1種。穏やかな香りと繊細な風味をもつハーブ。オムレツやサラダに入れたり、お菓子のデコレーションに使ったり、品のいい上等な一皿を演出できる。ただ、持ちが悪いので早めに使い切ることをお勧めします。
バジル basilic(バジリコ、バジリック)
バジル basilic(バジリコ、バジリック)シソの仲間で、さわやかな芳香が魅力。「ハーブの王様」ともいわれる、イタリア料理や地中海料理にかかせない食材。松の実やオリーブオイルとあわせてペースト状にしたソース・ピストゥーや、シンプルに茹であげたパスタにオリーブオイル、塩こしょうとちぎったバジルを和えただけの一皿も美味。トマトやモッツァレラチーズとも相性がよく、サラダやピザに最適。最近は、いちごやチョコレートと合わせたデザートが人気上昇中。
ローズマリー romarinローズマリー romarin
南仏出身の豊かな香りをもつローズマリー。若鶏、仔羊、仔牛のオーブン焼きはもちろん、刻んでパンに混ぜ込んだり、ソーセージに入れても、素晴らしい風味を発揮する。乾燥させたものは、タイムやローリエと一緒に束で売られている。このブーケ・ガルニは、フランスでは煮込み料理の定番食材で、様々な料理に活用できる。
ロケット roquette(ルッコラ)ロケット roquette(ルッコラ)
「貴婦人のスミレ」という別名をもつ、イタリア原産のハーブ。ピリッとしたほろ苦い味とゴマのような風味が特徴。マーシュ、エンタイブ、ほうれんそう、タンポポの若葉とともに、いろんなサラダ菜を混ぜ合わせたニース名物のサラダ・メスクランにかかせないハーブ。
レシピ
塩味のハーブケーキ
材料
【4人分】
塩味のハーブケーキ小麦粉200g、
卵3個、
ベーコン100g、
グリュイエールチーズ100g、
ベーキングパウダー1袋、
牛乳100ml、
植物油(ひまわり、コルザ、オリーブオイルなど好みで)100ml、
好みのハーブ(パセリ、ミント、エストラゴン、シブレットなど)
作り方
1. オーブンを200℃に設定。ベーコンは熱湯にくぐらせ、余分な脂分を除いておく。牛乳は人肌程度に温め、ハーブは細かく刻む。
2. 小麦粉、ベーキングパウダー、溶き卵、植物油の順にゆっくり混ぜ合わせる。
3. 生地がしっとりしたら、グリュイエールチーズ、牛乳、ハーブ各種、ベーコンを加え、静かに混ぜ合わせる。
4. オーブンに入れて約30分。ハーブの芳香が辺りを包み、中までしっかり火が通ったら出来上がり。

☆ ベーコンの代わりに、残り物のローストチキンや角切りのハム、ソーセージを使っても美味しい。持ち運びも便利で、ピクニックにも最適。小さく切って楊枝をさせば、素敵なアペリティフにもなる。
レシピ
エストラゴン風味のローストチキン
材料
エストラゴン風味のローストチキン 丸焼き用の若鶏(1,5~1,8キロ)、
エストラゴン2束、
レモン半個、
生クリーム200cc、
バター20g、
卵黄1個、
エシャロット2個、
たまねぎ2個


作り方
1. オーブンを200℃に設定する。丸焼き用の若鶏にしっかり塩コショウし、半個分のレモン汁を擦りつける。
2. 室温に戻して柔らかくなったバターと、刻んだエストラゴン大さじ3杯分を混ぜ合わせ、バタークリームを作る。このクリームの半分を鶏の表面に塗りつけ、残りはエストラゴン3本分とともに腹の中に詰める。
3. 鶏を皿にのせて、周りに薄切りにしたエシャロットとたまねぎを並べる。50ccの水を注ぎオーブンへ。
4. 途中、出てきた肉汁をかけまわしながら、約1時間15分、こんがりと焼きあげる。そして一旦火を止める。
5. 生クリームに大さじ4杯分の刻みエストラゴンと卵黄を混ぜ合わせ、塩・こしょうで味を調えたソースを若鶏にかける。しばらく待つこと約5分、余熱でじっくり味がしみわたったところで出来上がり。

☆ 付け合せはご飯やじゃがいものピュレ、タリアテッレなどきしめん状のパスタが美味しい。定番の家庭料理ローストチキンも、一手間かければ、おもてなしの素敵な一皿に変身する。