|
料理をやれ!
「本当はスポーツをやりたかった」と聞くと、なるほどと思える体躯。ところが怪我をしてスポーツ選手を諦めなければならなかったとき、高校の先生に何の根拠もなく「フランス料理をやれ」と言われ、素直に従ってしまった。
料理学校を出て、日本のフレンチ料理界を代表する鈴木喜司さんなど、有名シェフの元で修行後、2002年に渡仏。
地方巡業からパリへ
最初はプロヴァンス、ブルゴーニュ、ノルマンディなど地方のレストランで修業する。地方のレストランは従業員用のアパートがある場合が多く、労働許可証などうるさいことを言わないから。地方巡りのあと、パリに来て、『ラ・ターブル・ド・ジョエル・ロブション』、『タイユヴァン』と超有名なレストランを経験。
2008年、アルページュでメートル・ドテル(接客責任者)だったローラン・ラペ-ルが新しいレストラン、AGAPE(アガペ)を開くとき声がかかり、スーシェフ(シェフの次)を勤めた。27歳の若いシェフ、ベルトラン・グレボをサポートする役目で、1年目に星ひとつ取れると、お役目終わりとばかりにやめてしまう。あの辛らつな料理評論家フランソワ・シモンが絶賛したレストランなのに、もったいない!
でも彼の視線は別のところを見ているようだ。
『スケッチブック』誕生
4年前から沖山さんは友達の料理人と“クリスマスパーティ”をやっている。フランスに暮らしながらフランス料理を食べたことがない日本人の多さに気づき、彼らに色々な料理を少しずつ味わってもらおうという趣旨。毎年クリスマスに、20品から30品のディナーを、多いときには100人近くに供する。儲けのない完璧なボランティアだ。
「何か買ってきて自分の部屋で食べている学生の人に、フランス料理を知ってもらえる機会。作るほうだって、いつもは自分の分担しかやらせてもらえないのに、ひとりで考えて最後まで作る、といういい経験になるから」
そこへ、食文化会員制クラブ116(Culinary Culture Club Cent Seize)との出会い。オープンキッチンとサロンからなる90㎡のモダンな空間を、レセプションや会食に提供している日本の会社だ。ここに予約が入ると沖山さんたちが料理を作るというコラボレーションが成立し、ケータリンググループ『スケッチブック』が誕生した。2008年9月のこと。
約30人のメンバーは半分が料理人やパティシエ。半分はグラフィストやデザイナーなど料理と関係ない職種だけど、パーティの企画などで彼らのセンスが発揮される。みんな仕事を持っているので、注文が入ったときに時間のある人が集まるようになっている。
「お祭りが好き、大勢でやると楽しい」
先日は結婚式のパーティで、30品ほど作った。作りたいものを一人3点ずつ80人分・・・全体の調和とか、同じ料理がだぶる心配はないんだろうか?
「クラシックなものを作る人、珍しいものを作る人を組み合わせ、各料理人が作るものを決めたときミーティングすれば、かぶらないでバラエティのあるメニューになる」と沖山さん。軽いノリに見えて、しっかり指揮者の役目をしている。
大きな目標は自分のお店を持つこと。これは『スケッチブック』の相棒、森下亮さんと2人の企画。1日中ノンストップで開いているフレンチレストラン。「それは今年中に開いて、2号店はお蕎麦屋にしようかな」「!?」
料理への情熱も自分の形を持っていて、その情熱は意外な方向に進んでいく。
とにかく、高校の先生は先見の明があったということだ。
|