ミッシェル・クロス オーガニックコスメ クリエーター
Michèle Cros, créatrice des Douces Angevines

ロワール地方のアンジェから車で15分走ると、家より緑の多いのどかな風景。そこに菜園とラボラトリーを持ち、手作りのオーガニックコスメ、 Douces Angevines/ドゥース・アンジュヴィヌを経営して20年のミッシェル・クロスさん。
ご自慢の菜園を案内しながら語ってくれた植物への情熱、自然の力。

どうしても植物が好き
小学校、中学校で国語の先生をしていたミッシェル、「どうしても植物と関わることがしたくて」フラストレーションが高まり、ある日辞職。2年間、薬草学の専門学校に通った。
薬草を販売していい資格を得たミッシェルは、レシピを考え、最初の試作品10点を作った。友達や知人に実験台になってもらったところ、評判は上々。その試作品のひとつ オーブ・デテ(夏の夜明け)は同じ処方で今も人気商品だ。

特許の製法
ミッシェルの製法は、選んだ香草や花を植物性オイルに漬け込む。これはワイン製法のようにマセラシオンと呼ばれる。熱は加えない。漬け込み時間は植物によって異なる(漬物と同じ?)。それを濾過して得た液体は、オイルでもなく、エマルジョン(フリュイド)でもない。透明でオイルよりサラリとした液体をコスメト・フリュイドと名づけ、特許を取った。

ドゥース・アンジュヴィヌの誕生
1994年、彼女は薬剤師の女性と組んで、ドゥース・アンジュヴィヌ(優しいアンジェの女性)を設立する。昔から薬草・香草を育て、ティザンヌ(煎じ茶)やスキンケア商品を作るのは女性の仕事なのでこの名前に(ちょっと覚えにくい)。薬剤師は、エコサート、コスメビオなどの認定を得るために必要なパートナーだ。
基礎ケア製品の10点を、地元のオーガニック製品店やビオ・コップ(オーガニックのチェーン)で売り始めた。

ある日、小学生だった息子さんが自動ドアに指を挟まれた。痛さにうめく子供に湿布をして、彼女は大至急“治療薬”を作り始めた。昔からの製法を頼りに、炎症を抑え痛みを鎮静する薬草とオイルを組み合わせる。できあがった薬をたっぷり指に塗って眠った息子さん。「翌朝、挟まれたのがどっちの手の指だかわからなかったのよ」とミッシェル。
その薬はボーム・ア・ボボ(痛い痛いのバーム)と名づけられカタログに加わった。

“ゆっくり”が大切
フェイスケア製品にはエイジングケアが加わり、ボディケア、髪のケア製品も誕生。虫刺されや脚のむくみ、肌の赤みなどに効く“薬用”ラインも充実し、製品数は40点になった。
ドゥース・アンジュヴィヌの製品はフランス全土はもちろん、ヨーロッパ、アメリカにも輸出されるようになる。
「でもね、作り方は全然変わらないのよ」とミッシェル。「自分で育てる植物、手作業、そして“ゆっくり時間をかける”、これが大切。工場生産じゃこういう製品は作れない」
ミッシェルの話し方も、ここで働く人たちも、すごくゆったり穏やかなのに気づいた。“優しいアンジェの女性たち”・・・

夕方、人が溢れるパリのモンパルナス駅に着いたとき、別の惑星から帰ってきたような気がした。